~バーチャル墓参(オンライン)とデジタルマップ導入の必要性~
民俗学的に日本における墓地は「両墓制」であり、「葬地」と「祭地」の二つの機能を併せもっているといわれている。前者は納骨する場所のことをさし、後者はお参りする先のことをさす。
毎年160万人が亡くなる高齢化社会において、慢性的な墓不足が社会問題となっている。しかし、場所を問わずに無理な負担を必要としない合祀タイプの墓地を含めれば、「葬地」が足りないということはないはずである。昨今、一般墓や納骨堂よりも樹木葬や海洋散骨の人気が高いが、住居に近い合祀墓(永代供養墓)を希望する人も全国的に増えているようだ。消費者の視点で考えてみると、樹木葬や海洋散骨は「葬地」重視の選択であり、同居家族がお参りしやすい立地を選ぶのは「祭地」重視の選択だといえる。樹木葬や海洋散骨する地は、家族が墓参りするには困難な場所であることが多い。また、住居に近い立地の合祀墓を希望するのは「祭地」重視の結果であろうが、親子や兄弟の離散が普通のことになりつつある現代社会において、すべての親類や子供の住居から近い立地はありえない。すなわち、「葬地」と「祭地」の両方を同時に充たす墓地は理想でしかないのである。
少子化にともなって、継承者のいらないお墓を選ぶ人が増加している。子孫の墓参りを期待しない代わりに、生前に好みの「葬地」を選べるということである。思い出のある場所だったり、大切な人(ペット)と同じ所だったり、消費者の嗜好は千差万別である。例えば、自然に囲まれた山間部の樹木葬墓地や日頃から散歩がてら訪れている近隣の寺院墓地など。
オンラインでのお墓参りができる墓地であれば、ユーザーはどこからでもバーチャルでお参りができるようになる。すなわち、バーチャル墓参りが導入されている墓地であれば、「祭地」の条件を考えず、自分の嗜好に合致した「葬地」を選択できるということだ。
一般に墓参りは契約者とその家族がすることと思われがちだが、わざわざ遺族に聞かなくても故人の墓の場所がわかるのであれば、墓参りをしたいと思う縁者や友人は意外と少なくない。昨今、家族葬の割合が増加しているが、葬儀に参列できなかった友人や知人などで、機会をみて墓参りをしたいと思っている人が増えていると推測できる。 ライフスタイルの変化によって、消費者の墓地決定のプロセスや基準が変化している。バーチャル墓参の普及は、消費者の墓地選択の幅を広げる。寺院の墓地事業は、地域に根差した檀家という顧客基盤から、オンラインサービスの利用者(ユーザー)という新たな顧客基盤を構築すべきだと考える。また、民間墓地においても、契約者だけでなく家族や親戚・友人のお墓参りのニーズ取り込むためにも、バーチャル墓参やデジタルMAPなどのシステムを早期に導入されたい。