墓参りは、お盆、お彼岸、故人の命日などに行うことが多い日本人にとっては馴染み深い行事です。しかし、地元から離れて働く人が増加し、社会全体が高齢化するのに伴って、定期的に墓参りすることが、年々難しくなっていると感じている人は少なくないでしょう。
さらに2020年から世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響もあり、全国石製品協同組合の調査によれば2020年にお墓参りを行った人の割合は63.9%で、2016年と比べると25.4%も減少しています。
今回はインターネット墓参りの概要や形式、メリットなど基本的な知識をまとめて紹介いたします。
※出典:全国石製品協同組合「コロナ禍における「お墓参り」の現状についてアンケート調査を実施」
多様化するオンライン墓参りの形式
インターネット墓参り(オンライン墓参り)とは、従来、お墓に赴いて行う必要があったお参りをインターネットを介して行う仕組みのことです。デジタル技術と日本の伝統的なしきたりを組み合わせた新しいカタチのサービスで、インターネットやスマートフォンの普及にともなって、急激に発展を遂げています。
また、インターネット墓参りはサーバー上の「バーチャル霊園(仮想霊園)」か、「実在するお墓」にカメラなどを通して「バーチャルに参る」の2種類に大別できます。まずはそれぞれの特徴を簡単にみてみましょう。
バーチャル霊園(仮想霊園)にお参りする形式
実在しないお墓である「バーチャル霊園(仮想霊園)」をサーバーに構築し、そこにお参りする形式です。海外では一般的になりつつある方法で、費用が安く、どこからでもお参りできることがメリットです。しかし、お墓参りの文化が浸透している日本人にとっては、バーチャル霊園へのお参りでは「物足りなさ」を感じてしまうという人が多いのではないでしょうか。
実在するお墓にお参りする形式
お墓の画像や動画をパソコンなどで見ながらお参りする形式も、オンライン墓参りの主要な方法の1つです。本物のお墓の画像、もしくはリアルタイムな映像を見られるので、バーチャル霊園と比べてリアル感が高く、いつもと変わらない気持ちでお参りできるのがメリットです。
ネットで注文できる従来の「墓参り代行」もオンライン墓参りの類であるといえます。
現状のプレイヤーについてご紹介します。
インターネットで墓参の模様の撮影・生中継サービス
墓参りできない人に代わってスタッフが実際にお墓に赴いて映像や画像などを共有するサービスです。従来の墓参り代行でも掃除の事後写真を共有してくれるところもあります。また業者によってはお掃除の光景をライブ中継し、リアルタイムで一緒に手を合わせることができます。リアルな墓参りをバーチャル体験できるだけでなく、他人にお墓を任せてしまう際に感じることが多い不安などの解消にも役立つサービスといえます。しかし、いずれも気軽に頼める値段ではありません。
従来の墓参代行の後に事後写真を送るサービス 10,000円~20,000円程度
ビデオ会議システムを活用した墓参ライブ中継サービス 25,000円程度
VRヘッドセットを利用したバーチャル墓参りサービス 25,000円程度
ネットとリアルを組み合わせたサービス
実在する霊園が、利用者向けのインターネット墓参りのサービスを提供しているケースもあります。初回登録することで霊園内にある墓所の画像が閲覧可能になり、パソコンやタブレットを通じてお参りすることができます。
さらに有償で実際に供花するサービスを実施している霊園もあり、利用すると供花時の写真をアップしてもらえます。すべての霊園でインターネット墓参りを利用できるわけでありませんが、一度、契約している霊園に同様のサービスがあるかを確認してみる価値はあるでしょう。
Webページを参拝先としたサービス
米国では、お墓ではなく故人のホームページやオンラインアルバムに対して参拝をするのが人気です。すでに数百万の規模のユーザーを抱えるサービスもあります。お墓参りの文化がある日本では、普及は難しいと考えられます。
オンラインでお参り動画の撮影を依頼できるサービス
様々な理由で直接、墓参りできない人に代わってお参りし、墓前で依頼者の音声メッセージを流しながら動画を撮影するサービスです。株式会社ジャムコムが提供するバーチャル墓参アプリ「セレモビ」は、1回3,300円でお墓参りを依頼することができます。オプションで生花・線香などを選択できるほか、墓地によっては簡易な清掃も受け付けています。
アプリを活用したサービス
シニアが主なユーザーと想定されるエンディング産業においては、スマートフォン・アプリを活用したサービスはまだ少ないのが現状です。オンライン墓参りとは異なりますが、アプリを使ったサービスをご紹介します。
墓参代行の依頼者と業者をマッチングするアプリは、これまで地域密着であった墓参り代行を全国展開することを目的として開発されたシステムです。お線香にこだわったお参りを提案しています。
故人の情報を記録して管理するためのアプリでは、戒名・法名戒名、俗名、没年月日、行年(享年)などの情報はもちろん、故人の写真やエピソードなどを記録。後の世代に鮮明に残すことができます。さらにお墓を管理している寺院や石材店、霊園、納骨堂と専用ページを通して簡単につながれるので、もしものときの備えにもつながります。
遺言をテキストで残すアプリも開発されています。スマートフォンだけで司法書士が監修した法的効力がある遺言の見本を作成することができます。チャットで投げかけられる質問に対して回答するだけで、残すべきことを提案してくれます。
遺言メッセージを動画で残すサービスは、アプリのガイドに従って撮影するだけで簡単に遺書動画の作成が可能。アプリの利用方法も簡単で、シニアの方でも手軽に利用できます。
10年後、オンライン墓参りはあたりまえの世の中に
少子化や地方の人口流出に歯止めがかからない状況が続きており、墓参りとは疎遠になってしまう人が増え続けるのはトレンドであり、新型コロナウィルス感染症がそれに拍車をかけています。
例えば毎年お盆にお墓参りに行くという習慣のある方が、一度インターネット『代行』で済ませてしまうと、二度・三度と繰り返すことが予想されます。また、遠方のためこれまで墓参りをしなかった親戚が、オンラインで墓参りをするようになるということもあるでしょう。
セレモビは、「ユーザーが大切な人を想い偲ぶことをサポートする」を標榜しています。ユーザーの故人を憶いだす機会が増えれば、墓参の欲求が高まり、墓地の利用価値が高まるはずです。また、なかなかできない大切な人の毎月命日のお参りや怪我や病気などで移動が困難になっても自宅や病院に居ながらできるお参りをサポートしたいと考えています。信頼性とともに低価格を実現した新しいお墓参りのカタチを提案してまいります。